独学合格の可能性
通関士試験の勉強をするにあたって、通学や通信講座を利用する、あるいは過去に利用した経験がある受験生は多いです。
その理由としてよく挙げられるのが、独学は難しい、遠回りであるとよく言われるから、というものです。
しかし、やり方次第では独学でも十分合格可能性はある試験です。むしろ、授業を聞いたり通学したりという余分な手間がかからないので、人によっては独学の方が有利です。
けれども、次のような方は独学には向いていません。
1 意思が弱く一人では継続的に勉強ができない人
こういう方は、常に誰かにペースメーカーをしてもらわないと難しいのでおすすめしません。通学、通信であれば独学に比して学費が高額であったり、周囲の人の目があったりするので、勉強をすることへの心理的な強制力が働きやすいです。独学はやめた方がよいです。どうしても独学がいいなら、とりあえず一ヶ月勉強を続けてみてください。たった一ヶ月ですら計画していた時間の勉強ができないようなら、この先もっと無理なので独学には見切りをつけましょう。可能であれば、より強制力の働く通学講座がよいと思います。
2 教科書に何が書いてあるかほぼ理解ができない人
教科書はじっくりと読めば講師の説明なしで理解ができる前提で作られています。市販の教科書はどれも予備校などの受験業者が出版していることが多いですが、受験業者は指導のプロなので、それなりのクオリティで作っています。確かに、ところどころ言葉足らずだったり誤解を招く記述はありますが、全体的にはよくできています。
そのため、いくら読んでもさっぱり内容が理解できない、という方は自力で読み解く能力が足りていないので難しいでしょう。
もっとも、そうであれば、仮に通学や通信講座を利用しても理解できない可能性が高いとおもいます。
勉強している内容は同じだからです。
継続的にコツコツ勉強でき、教科書を読み解く力のある人であれば、市販の教材だけで十分独学で短期間に合格することができる試験だと私は考えています。
ただ、この試験を受ける多くの人は、勉強のやり方や試験の戦略を間違えてるために独学は難しいと考えているようです。なぜなら、通関士試験はマイナーな試験であるため、勉強方法についての情報があまり出回っていません。また、この試験の受験生には勉強が得意な人が少ないため、出回っている情報にも非効率的なものや本質を見抜いていないものがとても多く見られます。これは、合格者の情報でも同じです。なぜなら、無駄の多い勉強をしても、その分を努力でカバーすれば何とかなるくらいには難しくない試験だからです。
そうすると、独学で短期合格を果たすには、正確な情報と適切なサポートを受けるのがよいでしょう。勉強が得意であったり法律の素養があったりするのであれば別ですが、誰も頼る人のいない独学はあまりおすすめできません。
通学、通信講座の利用
まず最初に覚えておいて欲しいのが、これらを利用したからといって確実に、あるいは高確率で合格するという試験ではありません。
予備校や通信講座ではホームページなどで受講生の合格率を発表しているところもよくありますが、基本的には不合格者の方が圧倒的に多い試験です。
なお、業者が公表している受講生の合格率は、データの取り方や計算方法がバラバラなので、比較することにそんなに意味はありませんので、注意してください。
なんにせよ、とりあえず利用すればなんとかなるだろうという安易な考えは持たない方がよいです。とりあえずで確実に受かるような人は、利用しなくてもなんとかなるくらい勉強ができる人や法律の素養がある人だけです。利用を考えている時点で、あなたは相当真剣に取り組まないと受からない人だと思ってください。
利用するにしても、なんとなくこなすだけという受け身な考えではなく、自分の実力にするにはどうすればよいかを日々自問自答しながら主体的に取り組みましょう。
また、複数の講座を利用する方もおられますが、それは基本的にはおすすめしません。というのは、内容の重複する講座を複数受けてしまうよりも一つの講座で用いた教材を何度も復習した方が、密度が濃い勉強ができるからです。たくさん講座をとれば実力が伸びやすいだろうというのはありがちな間違いです。
けれども、例えば特定の範囲だけがどうしても苦手意識があって、現在受講している講座ではそこをカバーしきれないと感じたときに、そこを補う目的で新たに利用するならば、意味があるのでよいと思います。なお、特定の範囲だけでなく全範囲あるいは多くの範囲でよくわからないというのであれば、講座の質が悪いか自分に合っていないということなので、その講座から別の講座に乗り換えた方が早いです。
とくに、合う合わないは結構よくある話で、たとえば、丁寧な授業をしてくれるから良いと評判の講師が、その一方で、話が長くて無駄が多いという良くない評価を受けることもありがちです。理解のペースが遅かったり、記憶が苦手だったりする人にとっては丁寧だと感じても、そうでない人にとっては無駄が多いと感じるからです。
では、通学、通信のメリットデメリットを一般論として検討してみます。
(メリット)
・カリキュラムが組まれているので、学習計画の作成が楽。
・授業を受けた方が理解や記憶ができる人にとっては、実力がつきやすい。
・とくに通学は、周りの目もあることや高額の出費を伴うことから、勉強への強制力が働く。
・通学だと受験仲間が作りやすいのでモチベーションアップになることもある。
・分からないところを講師などに質問できることが通常。ただし、通信講座は質問できる回数が制限されているものもあるので注意。
(デメリット)
・独学に比して費用が高額となる。
・教科書を読んだり問題を解けば事足りる人であれば、授業に時間を取られたりカリキュラムの自由度が下がったりすることで余計な手間をとられる。
・意識の低い受験仲間とつるむと自分のモチベーションも下がることがある。
以上、これらはあくまで一般論としてのお話なので、あなた自身がどうなのかは別途考えてみてください。その上で、独学、通学、通信講座のどれが自分にとってベストだと思えるのかを検討して決めるのがよいでしょう。誰にとってもベストな選択というのはありませんので、一般論だけで決めずに、自分にとってはどうなのだろうかということをよーく考えてください。通学、通信講座にはメリットも多いのですが、自分は勉強が苦手だからとりあえず通わないといけないと思い込んでいるだけの人がかなり多いのが通関士試験です。
通学、通信講座を利用するのかしないのか、するにしてもどれを利用するのかは、今後の勉強方針を大きく左右する選択です。
全範囲がセットになっている講座だけでなく、一部だけの講座を販売している予備校などもあるので、苦手意識がある部分だけの講座を受講するということも考えてみてください。とくに三科目受験をされる方の場合は通関実務が試験科目に入ってきます。通関実務の時間に出題される申告書は、知っているか否かだけで決まる記憶問題とは異なり事務処理的な要素が入ってくるため、うまく行かないときに我流で進めるよりも人に教わって新たな視点を取り入れると発見があるかもしれません。
教育訓練給付制度
通学、通信講座を利用する場合、講座によっては、教育訓練給付制度という制度の適用がなされるものがあります。これは、受講料金の一部を国が支給してくれるという制度です。適用される講座かどうかは各講座のサイトやパンフレットなどに掲載されているのが通常です。
雇用保険に入っている、もしくは入っていた人が対象となりますが、厳密な要件については厚生労働省のサイトをご覧下さい。
人によってはかなりの額が支給されるので、値段をみて申し込みをためらっていた講座も購入できるチャンスがあります。