還暦目前の挑戦 〜通関士試験合格までの道のりと新たなセカンドキャリアへの決意〜

NOAH さん(2024年度合格 受験回数3回)

2024年11月12日税関ホームページでの第58回通関士試験合格発表。

通関士を目指してから2年3か月、時間は掛かりましたが、合格を手に入れることができました。勉強を応援し、支えてくれた家族、関係者の方々に感謝いたします。

合格までの勉強時間

試験勉強を始めてから合格するまでの累計1500時間位、平均すると1日一時間半くらいです。

私の場合2回不合格を喫しましたので、忘却を補うための時間も必要となり、累計では勉強に多くの時間を費やすことになりましたが、マイペースで、比較的楽な気持ちで勉強を続けることができ、結果として合格を得られたのは良かったと思います。

通関士を目指したきっかけ

現職は製造業の戦略企画部門に所属しており1988年入社より36年が経過しました。

現在の会社では、定年は60歳ですが、58歳の時点で再雇用を希望するかしないかの選択をして調書を提出、面談を受けます。私は心機一転新たな気持ちでセカンドライフを歩みだしたいこと、シニアの年限65歳に縛られずに働きたいことから社外転身を決め、会社に対して申し入れました。

転身先については、36年のキャリアの中で4年間ほど海外営業、エンジニアリングに携わったことがあり、海外とつながることに面白さを感じていたこと、その時分に学んだ貿易のしくみに興味を持っていたことから、貿易業界を狙うこととし、通関士の専門性の高い仕事に魅力を感じたことと、転職の際の強みになればとの思いから、貿易唯一の国家資格である通関士試験の合格を目指すこととしました。

基礎を作った一年目

勉強として最初に取り組んだのは「U-CANの通関士講座」、現職の会社で自己啓発として推奨され割引が適用されています。

「U-CANの通関士講座」のテキストは易しく丁寧に書いてあり、貿易に関してあまり知識を持たない私にぴったりの教材でした。

勉強は、テキストや問題集の項目、完了日を一覧にしたものを作成し、進捗を管理しながら進めましたが、現職の仕事量、自身の体調などは日々変わること、項目ごとの難易度で進捗状況も変わることから、予め計画を立てることはしませんでした。

本試験では、「実務」で準備不足がたたり、6割の合格ラインをかなり下回ってしまいました。初年度の勉強時間は400時間弱でした。

令和4年度(第56回)通関士試験 2022年10月2日(日)

通関業法 28/45点 (62%)、関税法 36/60点 (60%)、通関実務 22/45点 (49%)

その初年度にX(旧Twitter)やウェブサイトに掲載されている情報からオンライン指導会「みこ会」の存在を知り、11月上旬未だ合否発表前でしたが、試験直後に試験予備校や通信教育各社から発表される解答速報で合格点に達していないことは明らかでしたので、迷わず入会しました。

多くの問題に触れ経験値を上げた二年目

二年目はオンライン指導会「みこ会」とともにスタート。

「みこ会」に入会して間もなく11月に翔泳社の「通関士 完全攻略ガイド」(略称:ヒュー赤)プレゼントキャンペーンがあり、応募したところ当選。この“ヒュー赤”は一冊に試験範囲が凝縮されていて、目次や索引が充実していることから、辞書代わりとしてとても役に立ちました。1月には、LEC社とのタイアップキャンペーン「難関科目(通関実務)攻略パック」50%OFFがありこちらもすぐに申し込みました。

スマホ上で場所を選ばず学習できる「みこ会」の「過去問アプリ」は個々の問題に解説が付されており、法律科目を中心に勉強の定着を図ることが出来たと思います。

そして本試験を一か月後に控えた時期、模擬試験は、関税協会とLECの二つを受けました。関税協会は実務の出来が悪くE判定。LECの方は通関業法B判定、関税法C判定、実務C判定でした。正直、思ったよりも実力が伸びていないなと感じました。

そして一か月後の本試験、「実務」は再び6割を割り不合格。数字の読み違い、電卓の操作ミス、選択式問題の見落とし、さらには輸出申告問題で”Knittedとメリヤス編物及びクロセ編物を”結びつけることができなかったなど、反省点はありますが、そもそも問題を解くスピードが十分でなく、問われていることの理解があいまいなまま進め、それがミスを誘発していることが敗因でした。二年目の勉強時間はおおよそ600時間でした。

令和5年度(第57回)通関士試験 2023年10月1日(日)

通関業法 31/45点 (68%)、関税法 43/60点 (72%)、通関実務 24/45点 (53%)

問題を解くコツを掴みスピードを上げた年目

三年目は12月に勉強を再開。Trade Connect DAO「通関士試験コース」に入会しました。これは申告書の読解にフォーカスをしたコースで、みこ先生が「やさしい申告書演習」(後半には「難しい申告書演習」編も追加)と題して週一回のペースで「仕入書」に記載の物品が「品目表」のどれに当てはまるかを問題として出してくれます。「やさしい申告書演習」第64回まで、「難しい申告書演習」第5回までの演習を通して「類注」などの解釈は法律独特の書き方がされていて、読み方を知っていないと意味を正しくとらえることが出来ない(日本語と思ってなめていたら痛い目に合う)ことへの気づき得て、輸出/輸入統計品目表を読み解くスピードを上げることが出来たと思います。

また、「実務」では、申告書に加え、計算問題も重要なので、X(旧Twitter)でみこ先生が勧めていた日本関税協会の「関税ドリル」を新たに購入、勉強のレパートリーに加えました。

問題を解くスピードが遅い原因の一つは、電卓操作に慣れておらず、苦手としていたのですが、[+][-][×][÷]いずれかを2回押すことによりその前の数値が定数としてセットされるということに三年目にしてようやく気がつきました。

インボイス価格(US$)を円貨に換算する時、為替レートを定数として入れておくことで、

[インボイス価格][=]の操作だけで円貨を出すことができ、これで計算のスピードを上げ、ミスも減らすことができました。

8月にはTrade Connect DAO のオフ会が開催され、「もみじ」さん、物流ユーチューバー「イーノ」さん、貿易業界の方々、現役の通関士の方々、そして通関士試験合格を目指している方々と楽しくも貴重で思い出深い時間を過ごすことができました。

三年目の模擬試験は、関税協会とLECの模試を受けました。関税協会模試は実務の出来が思いの外悪くE判定でしたが、問題を解く上での基本中の基本である問題文中にある分類のヒント、「類注」や関税率表末尾に掲載されている「関税率表解説」に目を通すことを疎かにしていたことを反省する機会を得て、その二週間後のLECの模試では通関業法、関税法、実務すべてでB判定をとることができたのは自信になりました。

それから一か月後の本試験、三年目三度目の正直を経て合格をつかむことができました。

三年目の勉強時間はおおよそ600時間でした。

令和6年度(第58回)通関士試験 2024年10月6日(日)

通関業法 42/45点 (93%)、関税法 45/60点 (75%)、通関実務 33/45点 (73%)

振り返ってみると、合格までに遠回りをしたなと感じますが、2年8か月「通関士試験」と向き合った日々は、楽天的である私の性格もありますが、苦しみよりも新たな発見や、知識を積み上げることの楽しみ、充実感に満ちたものでした。

そうはいっても、頭が疲れてくると睡魔は容赦なく襲ってきます。いつの間にか寝落ちしているという状況を幾度となく経験したので、夜は早く寝るようにして、早朝、勤務前に学習するようにしたことで、勉強時間を確保することができました。

新たなセカンドキャリアへの決意

私は、2025年2月に還暦を迎えます。二年前から定年を節目に社外転身を目指してきましたが、いよいよ就職活動はこれから佳境に入ります。還暦を過ぎて、しかも未経験で通関業務に就くことの困難さはよく見聞きしますが、「通関士有資格者」を生かせる日が来ることを信じて就職活動を続けています。