えびはら さん(30代前半 女性 国内物流・倉庫会社勤務 2022年度合格 受験回数2回)
■通関士試験を受験しようと思ったきっかけ
私は田舎の物流会社で総務・経理として入社しました。年次を重ねていくうちにもっと自分の仕事の幅を広げたいと思い、今では営業から現場までこなす多能工として働いています。
しかし、入社時に担当していた総務・経理という間接部門のイメージと、男性職場の中で働く女性という立ち位置のせいか、なかなか成長に結びつく仕事の機会には恵まれず日々悶々と過ごしていました。
そんな中、自分が新たに担当することになった案件は輸入貨物の国内輸送・保管でした。輸入貨物といえど、あくまで通関が切られた後の内国貨物となった状態です。海外からきた貨物が国内物流のフローに入る前の段階に興味が沸き、調べていく中で「通関士」という職業を初めて知りました。
もし私が「通関士」になったら……。アウトソースしていた通関を自社で行えるのではないだろうか。今働いている会社へ何か貢献できるかもしれない。私個人としても、望んでいたやりがいのある仕事に就けるのでは。お給料も上がる気がする……。考え始めるだけでワクワクしました。
自分の残り30年余りの職業人としての生き方、そして人生そのものを大きく切り拓くべく、不退転の決意で通関士試験の受験を決めました。
■勉強方法と学習時間
<1年目・第55回通関士試験> 合計220時間
フォーサイトを1周した後は、「翔泳社 通関士完全攻略ガイド(ヒュー赤)」と「翔泳社 通関士 過去問題集(ヒュー青)」を活用しました。ちなみにフォーサイトで関税法を1周するだけで100時間かかりました。実務は「日本関税協会 計算問題ドリル」と「ゼロからの申告書(ゼロ申)」を購入したもののほぼ手つかずのまま本試験当日を迎えました。
敗因は仕事がキャパオーバーしていて月の残業が50~100時間ほどあり、勉強に時間を割けなかったこと、直前期に体調を崩し休職を余儀なくされたことです。
<2年目・第56回通関士試験>合計611時間
昨年合格された方々の体験記を読んで、合格者上位層と思われる方々の圧倒的な勉強量を知り、2年目は700時間を目標にスタートしました。
一度目の受験から、フォーサイトのみでは通関実務対策は不十分だと感じていました。通関業務未経験ということもあり独学で進めるのは厳しいと判断して、LECの通関実務に関する講座を全て取りました。
・関税法・通関業法
「翔泳社 通関士完全攻略ガイド(ヒュー赤)」とみこ会アプリのみで対策しました。
効率的ではないので一般的には推奨されない方法ですが、何周もテキストを周回するのではなく時間を掛けて濃密に1周しました。まとめノートも作っていました。
その上でみこ会アプリを使用し、ひたすらアウトプットして記憶の定着を図りました。問題演習はほぼアプリでしかやっていません。アプリで間違えたところ・わからないところのみテキストに立ち返りました。それでも納得のいかない論点はE-govから法律原文を参照していました。
テキストを1周しか回さないこの方法は、再受験ということもあって試験の全体像を把握していたからこそ有効だったと思っています。
・計算問題
みこ会の「課税価格決定のテキスト」は評判通り秀逸でした。計算問題はこのテキストでインプットした後にひたすら問題演習するだけで100%身に付きます。
・申告書
ゼロ申は数問しかやっていませんが、近年の本試験問題の傾向から少し乖離していると感じました。みこ会の解説がなければ心折れていたであろう問題もありました。
最終的に申告書問題は得意科目となったのですが、LEC申告書編と過去問だけで充分だと感じました。
・貨物分類
LEC貨物分類編は本当に名作です。こちらのおかげで分類に対する恐怖心がなくなったといっても過言ではありません。一通り講義を終わらせた後は、通退勤中の往復1時間、家事の最中などに毎日流し聴きしていました。
・過去問
本格的に取り掛かったのは2年目の受験というのにかなり遅く、本番1か月前でした。10年分解きました。本当は最低でも3周はしたかったのですが、1周しかできませんでした。
ですので、この体験記を読んでいる方で直前期なのに過去問に全然着手できていない方はまだ希望を捨てないでください。寧ろ直前期に初見の本試験問題に触れられるのは、真の実力を知る良い機会です!
凡ミスで大量失点をした回を除き、すべての初見過去問で合格点を上回り自信に繋がりました。
・模試
日本関税協会、LEC、TACの模試を申し込みましたが、実際に受験したのは前者2つのみです。直前期に過去問を残していたので、模試と復習に割ける時間がこれ以上なかった為です。
模試は可能であれば会場受験することをオススメします。自分より先に鳴り始める電卓の音にかなり焦りペースが乱れました。本試験ではそれらを踏まえて自分のペースで問題に挑めました。
日本関税協会の模試結果がかなり良かったので8月末の時点で「このまま勉強すれば合格できる!」と確信しました。一方でLECの模試では撃沈し、気を引き締め直すきっかけとなりました。
・参考とした資料や息抜き
○税関が作成した各種説明会のスライド
ネットで検索するとpdfファイルで転がっています。試験対策としては深掘って知識を得るのは非効率的ですが、理解しないと長期記憶できない私には有用でした。
○ゆっくり通関士ちゃんねる
元通関士の方が運営されているYouTubeチャンネル。1類~97類まで、写真やイラストを用いて分かり易く貨物分類を解説されています。サクッと見られるので息抜きにもオススメ。
○統計品目カード
ポケットに入れて携帯し、社内で歩きながら、ちょっとした手待ち時間等、スキマ時間に眺めていました。同僚にカードを見てもらいながら問題を出してもらったり……。
LEC貨物分類編を受講した際にも机上に並べて使いました。LECのテキストは文字のみなのでカードのイラストのおかげで視覚的に印象に残りました。
■本試験でのハプニング ~お食事中の方は閲覧注意してください~
試験開始時間は三科目それぞれ9:30~、11:00~、13:50~となっています。通関業法も関税法もそれぞれキリの良い時間から始まるのです。
私は大事なテストや試験の時は、行きたくなくても必ず試験直前にトイレに行きます。今回の本試験も同様です。
関税法にボコられ半ば放心状態で昼休みに入った私は、てっきり14:00から通関実務が始まると勘違いして問題の見直しをしていました。あと数分したらトイレに行こう…そう思った矢先、「今から問題を配布します。机の上を片付けてください」という試験官のアナウンスが会場に響き渡りました。そうです。トイレに行けませんでした。
試験時間1時間40分、まあ何かあっても我慢できるだろうと甘く見ていたのですが、昼休み中に粉末状の下痢止めを大量の水で流し込んでいた私に悲劇が訪れました。
トイレに行きたくて問題が全然頭に入ってきません。特に英語で書かれている申告書問題。私の英語力は義務教育修了レベルです。もはやinvoiceの読解を脳が拒否し、集中力の全てはお腹に注がれていました。
以前、試験の情報収集をしていた時に「トイレで途中離席した後、戻ってこられた」という受験者の声を見かけた記憶があります。しかし、ただでさえ時間勝負の通関実務。5分…体感では10分間、問題を検討するのではなくトイレの為に離席をするか検討していました。今回の試験で離席後に戻って来られる確証はない……離席するとその分問題を解く時間が削られる……。
しかしもう限界でした。一か八かで試験中に挙手をし、戻って来られるかの確認をしたうえでトイレに駆け込みました。
計算問題と申告書を急いで解き終えると残り15分しか残っていません。複数選択式と択一式が手つかずで丸ごと残っていました。正直、どの過去問よりも模試よりも最悪のタイムスケジュールです。試験中に不合格の文字が見え、今年の合格を諦めました。
放心していたら、昨年ギリギリで合格された方の合格体験記を思い出しました。一緒に頑張ってきたTwitterの皆さんのことも。すべての問題を精査・検討する時間はもうないけども、最後の1秒まで望みを捨ててはいけない。問題文が短く、すぐ答えに導けるもののみ解き、あとは適当にマークしました。
試験終了5分前、トイレに行きたくて錯乱状態になりながら解いていた計算問題と申告書問題の見直しをしました。時間がないのでマークミスがないかだけ……え、めちゃくちゃ間違ってマークしてる……。輸入申告書にいたってはマークする場所や番号が全部間違っていました。急いで消しゴムを握り一気に消しましたが時間がありません。もう間に合わないかも……と軽い過呼吸になりながら人生史上一番早いスピードで黒い丸を描いていきました。
すべてのマークが書き終わったのは試験終了の合図と同時でした。
自己採点では合格ラインを上回っていたものの、このような状況でしたので合格発表まで自分のマークミスに怯え暗澹たる思いでした。結果としては、合格することができ、最後まで望みを捨てず試験に立ち向かって本当に良かったと感じています。試験中、脳裏に浮かんだ沢山の方々に感謝したいです。
反省点は、試験開始時間をしっかり確認しなかったこと、問題配布中だったとしても試験開始までは時間が有るので(顔写真の本人確認とか)恥を捨てて手を挙げ、トイレに行かなかったことです。
(※ 来年以降も今回と同じように戻って来られるかはわかりません。また、試験終了30分前から途中退席ができるのですが、その時間帯になったら離席後に戻ってくることはできないと思われます。)
■謝辞
この度の合格は、みこ会ならびにみこ先生、会員、会員OB・OGの皆様の支えあってのことだと思っております。モチベーションを高い位置で保ったまま試験本番まで走り抜ける為にも、素敵な仲間の存在は重要だと感じています。
私は田舎在住かつ、通関業者勤務ではないので身の回りに同じ志を持つ人は誰一人としていませんでした。それどころか仕事をしながら勉強している人なんて好奇の目で見られます。独りで勉強している中、SNSを通して分からない論点を教えあったり、励ましあったり、時には愚痴を言いあったりできる仲間ができたのは、この「みこ会」というスタディーグループのおかげです。みこ先生からも直接RTやいいね、リプライを頂けて心強かったですし、何より嬉しかったです♪
この場をお借りして支えてくださった皆様に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
末筆ながら、みこ会の今後のご発展とみこ先生の更なるご活躍をお祈り申し上げ、結びの言葉とさせていただきます。