りんご さん(女性 業界未経験 2022年度合格 受験回数3回)
【なぜ通関士試験を受けようと思ったのか。】
前職ではメーカーとして問屋を通して商品を海外に輸出しており、インボイスやNACCSに触れる機会がありました。そこで貿易業界に興味をもちました。その頃「通関士」の存在を知り、魅力を感じ始めました。
また、前職で環境が合わず、ずっと転職を考えていました。とはいえ転職には大変エネルギーがいるもの。ためらっているうちに隣の部署に異動が決定。個性の強すぎる上司に囲まれ、ものの3ヶ月で適応障害を発症してしまいました。
療養のため退職と入院を余儀なくされたことがあまりにも悔しくて悔しくて…。環境を変えることに踏み出せなかった自分も不甲斐なく、このままではダメだと強く感じました。自分の市場価値を上げたい、新しい職場を探すための糧にしたい、そして、前職の上司すら誰も持っていない国家資格を取って見返したい。このような理由で通関士試験を受けることを決意いたしました。
4年分の奮闘記にお付き合いいただけると幸いです。
【第53回】
4月 退院したタイミングで勉強スタート。
まずは本屋で翔泳社のヒューマンアカデミーテキストを購入しました。
通関士試験の勉強は初学、法律の知識は義務教育で習った程度、貿易業界で働いたこともありませんので、内容を幅広く網羅していているテキストが自分には向いていると思いました。翔泳社のテキストは本屋の資格コーナーでは比較的よく見かけますので、手に取って内容を確かめられたのも決め手です。
最初は辞書のような厚みに圧倒されてしまいますが、勉強が進むうちに内容の網羅性に助けられました。「ここがポイント」での噛み砕いた説明が大変イメージしやすかったです。3回ともヒューアカテキストにお世話になりましたが、業法・関税法は全て合格点に到達できました。
5月 日本関税協会の『通関士試験 問題・解説集』『計算ドリル』を購入。
『通関士試験 問題・解説集』は10年分の過去問が収録されており(申告問題は3年分)、単元ごとにまとめられているので傾向が分かりやすかったです。問題文のちょっとした言い回しの違いを比較できた点も良かったです。
6月 『ゼロからの申告書』を購入。後々、中古でもいいから「ゼロ申」は1日も早く取りよせるべきだったと後悔します。
退院後も適応障害の体調不良をかかえており、集中力に不安がありました。日を追うごとに薄紙をはがすように良くなっていましたが体力的に限界があり3日に1回は休みの日を挟んでいました。それでも退職して全て自分の時間として使えましたので、1日に3~5時間は勉強できていました。
7月 みこ会入会。Twitterでリアクションやちょっとしたアドバイスをいただいていたので気になっていました。
入会してみると、通関士試験に見合った勉強法、さらには教材や予備校、模試のレビューもありましたので、あれこれ自分で調べるより手っ取り早く、もっと早くに入っておくべきだったなと思いました。
質問があまり上手ではないという気持ちがあり、なんだか緊張してしまってすぐには質問ができませんでした。
9月 模試で関税法が伸び悩み、これはマズいとかなり焦りました。それなりに勉強時間を確保できているのに自分より後から勉強を始めた人がぐんぐん追い抜いていく、そのことにも焦りを感じていました。質問がヘタクソなんて悩んでいる場合じゃない!と勇気を出してみこさんに相談。その時にテキストの読み方が足りないというような指摘をいただきました。本当にその通りで、演習や過去問ばかりやってテキストはあまり活用できていない状態でした。残り1か月、内容を理解しながら2周ほど読み進めました。
本番 それはもう、大変緊張してしまいました。通関業法と関税法はよかったのですが、輸入申告の見慣れない英単語に完全にパニック!!そのせいで、輸入申告は一度きれいに解けていたのに「こんなに簡単なはずがない!自分が勘違いしているのかも!!」とよく分からないテンパり方をしてしまい、変にいじってしまいました。計算問題も5問完答を目標にしていましたが正答できたのは3問のみでした。
結果 実務のみ3点足らず不合格。
実務対策の詰めが完全に甘かったと思います。分類も課税評価の決定も、きちんと根拠を理解しながら勉強していれば多少緊張していても確実に点が取れていたはずです。
関税法が例年より少し難しかったと軽くザワつきましたが、模試後みこさんのアドバイス通り勉強法を見直していたおかげで合格点が取れました。
勉強時間は350時間程度でしたが、理解を伴わないと意味がないのだと痛感しました(今考えると当たり前ですが)。
勢いだけでは取れない試験でした。
〈第53回の反省点〉
・演習を解くことばかりに集中し、テキストに丁寧に目を通せていなかった。
・問題に対応する答えを覚えてしまい、根拠の理解が乏しかった。
・勉強しやすい法律科目に逃げ、実務の演習が足りなかった(特に過去問は3年分しか遡れていなかった)。
・模試をひとつしか受けておらず、会場の緊張感を練習できていなかった。
【第54回】
「今年は実務の演習を徹底的にやるぞ!」と決意して本格的に勉強をスタート・・・のタイミングで妊娠が発覚。
気合いは十分でしたがつわりが酷く動けない日々が続きました。つわりさえ落ち着けば勉強を元気に再開できるものと思っていましたが、その後もリレーのようにマイナートラブル続きで大変しんどかったです。試験本番も文章を目で追うと気分が悪くなるという状態でした。
前年度積み上げたものがありましたので「実務をあと3点埋めるだけ」と、受験する気持ちは変わりませんでした。と言ってもテキストや過去問等でザッと復習するので精いっぱい。実務の演習を思ったように積むことができませんでした。
体調的に仕方なかったとはいえ、解答速報で実務が5点足りないと分かったときはかなり悔しかったです。
【第55回…スキップ】
最初はいけると思いスタートを切りましたが、母乳育児での貧血、定まらない子どもの睡眠時間、帰宅の遅い旦那…と生活サイクルを整えるのが大変難しく、この年は無理と判断。家庭を優先することに決めました。
この時点で3年目に突入していましたので、大変もどかしかったです。みこ会には入会しており、この年は「みこ会関税評価テキスト」が登場しましたのでゆっくりですが2回ほど目を通しました。ヒューアカテキストも2周しました。
家族との時間を楽しみつつ、Twitterで、育児や仕事と両立して勉強されている方がどのように時間を捻出しているか情報収集させていただきました。
【第56回】
12月 娘が一歳になったタイミングで勉強を再開。体調を取りもどし、少しずつ生活サイクルも整ってきていました。
家庭との両立を考えるとそれまでのようにまとまった時間をとるのが難しく、この年は試験間際もラストスパートはかけられないだろうと覚悟していました。スタートは例年より半年も早かったですし、とにかく毎日1時間は勉強時間をとれるようにしました。
それまでの勉強法との変更点は下記の通りです。
1 3科目とも80%の得点率で合格することを目標にする。
それまで「あと少し正答できていれば」という状況で泣きを見ましたので、余裕をもって合格できるよう80%の得点率を目標にしました。
テキストは3周精読し、間違えた箇所や理解できなかった箇所を逆引きで何度も目を通しました。ヒューアカは似ている条文で内容を比較しやすく大変使いやすかったです。
実務では申告・計算問題で満点をとることを目標にしました。ここで満点を取るためには課税価格の決定と分類の根拠をとにかくきっちり追うこと、見落としやミスをしないためのルーティンをしっかりと組むことが重要だと思い、対策を立てました。
2 実務中心の勉強にする。
1回目の受験で得意科目に逃げてしまった反省から、まず実務から取り掛かることにしました。他の科目に取りかかる時も、1日に1回は実務に触れるようにしていました。テキストや解説をみても分からない箇所はみこさんに質問しました。
「みこ会関税評価テキスト」は市販のテキストであまり詳しく説明されていないところまで丁寧に説明されていて、初めて「そういうことだったんだ!」と理解できたことが多かったです。また、私は分類の根拠をつかむのがヘタで最初はどのように勉強すればいいか分かりませんでしたが、みこ会の解説に分類の根拠がしっかり記載されていて大変助かりました。
この年は、LECの教材も活用しました。LECの「通関実務対策講座 貨物分類編」は分類のコツがわかりやすかったです。1ページずつコピーしてトイレに貼って毎日眺めていました。「実践力Power Up講座 計算編」も、ちょっとした言い回しで根拠が変わるような混同しやすいところを突いてきて、文章を見落とさないための練習になりました。
3 苦手潰しを徹底する。
理解が弱い箇所、不正解だったものを中心に勉強しました。間違えた箇所は解説やテキストでなぜ間違えたのか、何を勘違いしていたのか、他の法令と混同していないかなど見比べ、テキストや解説等で根拠をじっくりと追うようにしました。
また、みこさんに教えていただいていた「改善ノート」を活用しました。間違えた問題について、日付と問題番号、なぜ間違えたのか、次からどのように気を付けるべきかを簡単に記入していきました。
苦手科目は気合がいりますが、繰り返しやれば確実に力になると思います。
4 ミス対策を徹底する。
うっかりミスをしやすい方だと思ったので、ミス対策はかなり念入りにしました。
当日緊張で頭がテンパっても体が思い出せるよう、日頃から問題を解くときのルーティンを決めました。例えば申告では、問題文に分からないところがあると自分の性格ではパニックになりそうだと思いましたので、まずは仕入書と別冊に目を通すことにし、最後に問題文に落ち着いて目を通すようにするなど。他にも、仕入書のインコタームズに〇を付ける、輸出と輸入で混同しないようFOBかCIFか記入しておく…などなど。ひとつひとつはささやかなことですが本番かなり役に立ちました。
また、今回は3科目とも過去問(「ゼロ申」も)をプリンターで両面印刷して、本番のように直に書き込みました。例えば1回目の受験で、計算問題の書き込みスペースが思ったより小さくて慌てたことがありましたので、過去問に直に書き込むことによって、スペースをどのように使えば良いかなど練習になりました。
5 テキストの内容を音声で聞き流す。
出題されやすくかつ苦手な単元を、録音機で音声データ化して聞き流していました。育児や家事をしていると両手がふさがってしまうので、耳勉できたらいいなぁと思い、勉強時間を捻出するためにやってみたことでした。聞き流しでもけっこう頭に入るものだと思います。
自分で吹き込んで音源データにするのがけっこう手間でしたので、予備校の講座をダウンロードする方が良いかと思います。
他、この年はTACさんの会場模試を受験しました。当初は幼い娘とギリギリまで一緒にいた方が家族の負担が少ないと思い当日移動を予定していましたが、受けてみると慣れない土地を当日移動するのは負担が大きいと分かり、前泊のりこみに変更しました。
おかげで試験前日はゆっくりと自分の気持ちを整えることができました。
本番 お昼ご飯があまり喉を通らず、とりあえずラムネで糖分摂取しました。
実務は最初緊張で手が震えてしまいました。それでもミス対策のルーティンを進めるうちに落ち着きを取りもどせました。
結果 業法36/45(80%)、関税法46/60(76%)、実務35/45(77%)
解答速答の時点で合格見込み、「やっと…!!」と思わずガッツポーズが出ました。
解答速報で答え合わせをするのになかなか勇気が出ませんでしたが、Twitterで皆さんが固唾をのんで見守ってくださり、嬉しかったです。
1日の勉強時間は1時間から3時間でしたが、スタートが早かったのでなんだかんだ400時間ほど勉強できました。4年でトータル1000時間くらいかと思います。
【最後に】
受験を決めた時は「一発合格するぞ!」と息巻いていましたが、まさか4年もかかろうとは。 それだけに、合格を手にした時の喜びはひとしおでした。
受験のきっかけも挫折から始まり、2度も不合格を突き付けられ、なかなかつらい4年間でした。そんななか、家族をはじめ、Twitterのフォロワーさん、そしてみこさんに沢山励まされながらここまでくることができました。本当にありがとうございます。
資格はスタートラインに過ぎないとよく言われますが、私はそのスタートラインにどうしても立ちたかったのです。
この4年間、体を壊して退職、結婚、妊娠、出産、育児と、ここまで体調と環境の変化のオンパレードになるとは思いませんでした。そうでなくても日々突発的なことは起きますし、時間も環境も体調もと、全てを完璧に整えるのはそもそも不可能なのだと感じます。それでも小さな一つを積み重ねていく、ダメな箇所は改善していく、腐らず続けていくことが大事なのだと実感しました。もどかしさはありましたが、3年分の積み重ねがあったからこそ最後に結果を出せたのだと思います。
これから受験をされる皆さんもきっと結果が出るはずです。頑張ってください。心から応援しています。