難しいの?合格率は?一発合格できる?

難易度と合格率

通関士試験の難易度について、法律資格としては中の中か、中の上くらいだと言われることが多いです。
しかし、そもそも法律資格自体が資格試験全体の中で難しい部類に入るので、そこで真ん中くらいということは、やはり難しいということなのでしょう。

かなりざっくり言ってしまえば、勉強に自信がある人ならば多少勉強すればまず落ちることはない試験ですが、そうでなければそれなりに真剣に取り組まないと受からない試験です。

しかし、勉強が苦手だという人でも、方向性を間違わずにコツコツ勉強すれば、大抵は受かるような試験でもあります。

では、合格率からみて難易度を検証してみましょう。平成15年以降の合格率を受験者数、合格者数とともにまとめて表にしてみました。(データ引用元はこちら

年度受験者数合格者数合格率
平成15年(第37回)10,0011,21112.1
平成16年(第38回)10,1911,92018.8
平成17年(第39回)9,9532,46624.8
平成18年(第40回)10,3577257.0
平成19年(第41回)10,6958207.7
平成20年(第42回)10,3901,84717.8
平成21年(第43回)10,3678077.8
平成22年(第44回)9,4909299.8
平成23年(第45回)9,1319019.9
平成24年(第46回)8,9727698.6
平成25年(第47回)8,7341,02111.7
平成26年(第48回)7,6921,01313.2
平成27年(第49回)7,57876410.1
平成28年(第50回)6,9976889.8
平成29年(第51回)6,5351,39221.3
平成30年(第52回)6,21890514.6
令和元年(第53回)6,38887813.7
令和2年(第54回)6,7451,14016.9
令和3年(第55回)6,9611,09715.8

以前は10%を下回る年度も多かったのですが、近年ではもっと高くなってきています。

それでも合格率だけみれば5~7人に1人くらいしか受からないので、合格率低めな試験だとは認識されているかもしれません。でも、もう少し細かい事情を知れば、ちょっと勉強には自信が無いけどなんとか合格目指してみようかとなるかもしれませんので、その点についてお話します。

マイナー試験ということもありあまり情報が無い中で、みこ会は何百人もの受験生を指導しながら得た経験をもとにしたお話なので、他では得にくいと思います。

まず、①そもそもあまり勉強せず受験してる人がかなり多い試験です

明らかにまともに解いてないのに試験時間の途中で退室する人が珍しく無いという話は、受験生から毎年のように沢山聞きます。要は勉強してないから初めから諦めてるのです。それに、試験範囲の広さや問題自体の難しさからすると、そんなに高度な試験ではありません。

結局、ろくに勉強してない受験生が多いのです。受験資格はフリーだから誰でも受けられるし、受験料も安いし、会社命令で半ば強制的に受けさせられているというのはよく聞くケースですので、本気で受かりにきてない方が多いのでしょう。

次に、②受験生の学力があまり高くないレベルに偏っている試験だからです。

ほんとに難関と呼ばれる試験は概ね学力上位層5%~10%以内の人が受けるような試験なのですが(人によって感覚は違うので異論は認めます)、通関士試験の場合は私が今まで何百人も指導してきた経験からすると概ね上位20%以下くらいかなという印象があります(全体で見たときの話なので、もちろん例外もいます)。

この点について、異業種から受験されている方は特に、ハイグレードハイスコアの外国語資格を持つ受験生がわらわらいるのに??という疑問を持たれるのですが、そこがこの試験の受験生の最も特徴的なところなのです。

確かに、この試験の受験生は、異常に高レベルの語学系資格を持っている方が珍しくありません。例えば、TOEICであれば一般的には700超えたら結構凄いねみたいな印象だと思いますが、通関士受験生だと800、900オーバーなんていうのも普通にゴロゴロいます。

これは、通関士試験はマニアックなゆえに一般にあまり存在を知られておらず、受験生が貿易業界人やその志望者に極端に偏っており、その人たちは国際的な仕事をしていたりあるいは興味があることが多いので、外国語の勉強を熱心にしている(していた)ことがよくあるからです。(実際は通関士の仕事はそんなに外国語ができなくても何とかなりがちなのですが、貿易系の国家資格が日本では通関士試験しか無いから仕方なしに関連資格として受けている方もよくいます。)

一方で、文章を読んで論理構造を理解したり(読解)、計算(算数)をすることについては苦手とする傾向がみられます。特に算数については壊滅的な人も珍しくありません。

要するに、外国語のようにコツコツ勉強して慣れで習得していく暗記タイプの勉強については悪くないのですが、読解や算数のように思考力を要する勉強は弱点なのです。

そして、通関士試験は残念なことに、外国語能力はあまり無くても何とかなりやすいですが、読解や算数という思考力を主に試されるのでこれが弱点だと相性がよろしくないのです。

けれども、弱点な人がほとんどなので、結局そんなに心配する必要はありません。

そして、③通関実務の傾向が変わってきているというのも理由でしょう。

よく、通関士試験の難所は通関実務であると言われるのですが、その通関実務の中でも配点が半分くらいを占める「申告書」と呼ばれる分野があります。そして、申告書は特に読解や算数を必要とする分野なので、ここが複雑だったりひねった算数を加えられたりすると、前述の通り多くの相性が悪い受験生は振り回されます。特に算数なんかは元々通関士試験には直接関係ないので、ちょっとひねられると勉強量も何も関係なく撃沈してしまいがちです。第43回から第50回あたりまではその傾向が強い試験でした。ここは先程の合格率のデータにも結果として表れていますね。

けれども、近年は割と素直な申告書が出題される傾向にあり、ひねった算数を絡めたものも出なくなりつつあるため、勉強すれば報われやすい試験になってきています。

この点について、今も昔もそんなに申告書含めて通関実務全体は難しくないのになぜ合格率に影響するのか?とたまに受験生から問われます。

難しいか難しくないかはその人の学力によって感じ方は違うので一概には言えませんが、その人にとってはどれも大して難しくないと感じただけで、多くの受験生にとっては大きな違いがでるほど難易度に差があったと感じたということでしょう。特に理数系科目の得意な受験生からは、なぜこの計算を難しく感じるのかが分からないという意見はよく聞きます。

最後に、④SNSの発達により攻略法が認知されてきたのは大きいです。

私が受験した当時は、受験人数が少ないため情報も本当に少なく、たまにあっても②のような理由から変な攻略法ばかりの試験でした。受験人数が少ない試験なので予備校もあまり力を入れていないし、指導できる人の数も少なかったのです。

そのため、予備校等を使っていない限りは、的外れな勉強をしている受験生だらけでした。

そこで、みこ会を始める時に開設したTwitterで受験生の指導を始めたところ、みこ会員の合格報告がTwitterで上がってくるとともに、その合格者によって学習方法や試験についての考え方などが広く共有されてゆき、受験生が評判を聞きつけてさらにみこ会員が増え翌年の合格者も爆増するという現象が起きてしまったのです。

このサイトを訪れていただいた方の中には、どこかでみこ会の噂を聞きつけて訪問された方も多いと思いますが、そういう理由で有名になってしまいました。(まだ認知されてない頃は「通関士 ブログ」みたいなフレーズでの検索から訪問されてましたが、今はダイレクトに「みこ会」やTwitterのリンクからの訪問者が殆どです。)

大手予備校や出版社がみこ会とタイアップしてキャンペーンを定期的に出してくれているのは、その裏付けの1つです。(ちなみにみこ会のタイアップ先は、受験生のためになると感じる商品だけを選定しているので、それもあって受験生から信頼を得ています。)

こういった形で、攻略法が広まり合格者が増えるとともに受験生や企業が一層みこ会の周辺に集まってきて、それによって皆で攻略法を更に改良しながら広まっていくため、数百人、数千人の規模で影響が出るようになったのです。

元々、いくら難しいとはいっても普通の人が正しい攻略法でコツコツやれば何とかなるレベルの試験ではあるため、やり方を間違えなければ合格可能性は一気に上がります。

以上のように、知らない人からすれば実態より難しいと誤解されがちな試験ですが、まあまあ頑張ることを前提に、受かりやすくなってきてはいるでしょう。

一発合格できるのか?

これについては、公式なデータは公開されていないものの、私の実感として1回目か2回目で合格する受験生が多いです。

その理由は、まず、通関士試験の勉強自体が一年もかからずに全範囲を終えることができるので、お試し受験をしなくとも初回から合格を狙えるということがあるでしょう。

次に、通関士試験に限らず、一般的に資格試験に受かる受験生は1、2回目で受かる方が多いということです。だらだらと何年も中途半端に勉強するよりも短期集中の方が実力がつきやすいこと、2回以上落ちる受験生はもともと適性があまり無かったりすること、何度も落ちたならもういいやと受験をやめてしまう人が増えることなどが原因です。

以上のことより、一発合格は十分狙える試験です。むしろ、受けると決めたのなら一度で受かる気持ちで勉強しないと合格は難しいでしょう。仮にだめだったとしても、そのとき頑張った経験は次回の受験に生きてくるはずです。

一方で、勉強を続けて3回目以降で合格したという人もたくさんいらっしゃいます。本当に合格したいのであれば、何度でも挑戦してみましょう!受かってしまえば得る資格は皆同じです。中には、資格の合格までの受験回数や期間をいつまでも引っ張る人もたまにいますが、ちゃんと仕事が出来るようになってしまえば、そんなことは関係ありません。資格はあくまで手段です。