仕事と育児の合間に2,000時間を捻出

kashim さん(33歳 業界未経験 時短勤務 娘2歳 2021年度合格 受験回数1回)

●挑戦の動機

仕事と子育ての両立にも慣れてきたので、身動きの取りづらいコロナ禍を利用して何かに挑戦したいと思いました。ゆくゆくは英語+α(専門知識)の仕事をしたいと考えていたため、大学時代に憧れた通関士受験を決意。申し込んだ通信教育のテキストでは不十分に感じ、みこ先生に師事しました。

●開始時期と勉強時間

・2020年通関士試験の日に初めてテキストをひらき、きっかり1年間

・1日5時間〜7時間の勉強時間を捻出

(朝4時から娘が起きるまで/職場でのお昼休憩/帰社から保育園のお迎え時間まで等)

合計勉強時間は恐らく2,000時間をゆうに超えています。しかし最後の数ヶ月はこの世に実在する問題をすべからくやり尽くし、手持ち無沙汰になってしまったので、ここまで時間を費やす必要があったのかは果してわかりません。丸々一年は長過ぎたかもしれませんが、元来きまじめな性格のせいか中だるみもなく、これだけがんばったのだからという自信にはなりました。

●使用した教材とその印象

・通信教育F:初めの数ヶ月のみ使用。基礎が上手くまとまっていて導入には良かったのですが、内容の薄さを感じました。宣伝文句に合格基準の6割を取るための最短コースなどととありますが良くも悪くも真実です。合格ギリギリの6割を目指していると僅かなミスで涙を呑むことになるので、満点を目指して取組むべきだと思います。

・合格ハンドブック:通信教育Fで基礎を頭に入れたのち、主たるテキストとして使用。大抵の知識は書いてあるので、繰り返し読んで過去問を解くことで習熟度が高まりました。

・関税評価ドリル:文章丸暗記ではない「深い理解」が得られます。

・計算ドリル:必携。関税の計算はただの算数のように素直に足して行けばいいというものではないので、問題の数をこなす必要がありました。

・通関実務集中対策問題集:関税評価の解説がどのテキストよりわかりやすいです。第一版〜三版で掲載問題がいくぶん異なるので、いずれも購入しました。

・ゼロからの申告書: 皆使っているので、やはり必携。解説は不親切なので、ある程度実務の理解が深まってから使用したほうがよかったです。

※私は20年12月頃に実務の勉強を始め、ゼロ申に取りかかりましたが当初は計算方法が全く理解できませんでした。幾つかのパターンを理解してペンがスムーズに進むようになるまでに1,2ヶ月かかりました。申告書一つを1時間以内に解けるようになるまでにはさらに2ヶ月かかりました。

・本試験過去問:ネットから引用。

・実行関税率表:税関HPより。全ての類を2〜5周。重要な類は印刷して読み込み、ピンときた所にマーカーし、分類専用ファイルを作りファイリング。時間も精神力も削られる作業でしたが、森羅万象おおかたの分類は頭に入りました。

模試: 新しい問題を入手したかったため4社申込みました。「どうしよう、わからない、でも落ち着いて!」を体得する練習になるので、本番同様のスケジュールで取り組むことが大事。

●合格できた理由3つ

①いつでもみこ先生に質問できたこと

LINEで24時間、質問を受付けて下さり、お返事も迅速なのでこんがらがった頭が忽ちスッキリします。いい加減な質問ではきっとお説教をくらってしまうとびくびくしていたので、今一度よく考えてから質問を投げたのも自分のためになったと感じています。

②繰り返し学習したこと(一度出来た問題も含めて)

新しい知識をインプットすると古い知識が抜けていきます。あまつさえ、ある程度知識がついてくると、それまで難なく出来ていた問題でも深く考えすぎて間違います。勉強はこの連続でした。幾度もつまづき、乗り越えて理解が深まっていくので、繰り返し学習することはとても大切です。マイナー資格のため問題集の数も少ないので、上記の問題集はそれぞれ20周ほどさらいました。

③自分に合った勉強スタイルを見つけること

私は勉強することがいっこう苦にならないタイプですが、人それぞれ集中できる時間・時間帯が異なると思うので自分に合った勉強スタイルを早いうちに見つけることが肝心と思います。

●おすすめの記憶定着法

あさ頭に入れた知識を、その日の就寝前にも覚えているか確認することです。

貨物分類は、写真のように専用のファイルを作り自分なりの覚えかたで理解していくのが良いと思います。

●結果と感想

点数:通関業法34/45 関税法49/60 通関実務44/45

通関士試験に挑戦して得られた成果は、ひとえに精神力の向上です。この一年間、背もたれのない椅子にずっと腰かけているような落ち着かない気持ちが続きました。娘がひとたび泣けば勉強はプツンと中断されるので、追込み時期は育児との気持ちの切り替えに苦心しました。

当日は通関業法がことのほか難解で弱気になりましたが、心を持ち直す練習を模試でしていたのが幸いしました。また、6割ではなく満点を目指して取り組んでいたことも心の余裕に繋がりました。

今回得た知識が今の業務に直結することはなくても、転職活動の足がかりになったのは確かですし、寸暇を惜しんで勉強する行為そのものが自分を成長させてくれたように思います。しばらくは真心込めて家族と向き合う時間を大切にし、フルタイムで働けるようになった暁には、合格証書を引っ提げて憧れの貿易業界にデビューしたいと思います。

長くなりましたが、学習意欲を奮い立たせてくれる一節で締めくくります。

勉強というものは、いいものだ。日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ。覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。

学間なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものなんだ。これだ。これが貴いのだ。-太宰治『正義と微笑』