なお さん(30代男性 会社員 2020年度合格 受験回数1回)
➢ はじめに
通関士試験を受験される方には様々な方がいらっしゃると思います。それぞれのバックグラウンドに適した学習法があると思いますが、本合格体験記がみなさまにとって少しでも参考になれば幸いです。
➢ 自己紹介
30代半ば、家族は妻、子2人と犬がいる会社員です。前職は公務員で約10年間勤めた後、2020年に転職しました。転職先では取引先に通関業者や代理店の方も多く、仕事に必要な知識を少しでも得られればと思い、受験を決意しました。
貿易に関する知識は全くありませんでしたが、前職では法令や通達に基づいて仕事をしていたので、法律の読み方には比較的慣れていたと思います。また、今の仕事で通関書類等を見る機会もあるので、仕事と試験勉強の知識がリンクしやすかったです。受験勉強などの経験から、自分なりの暗記するコツや暗記するまでのプロセスもほぼ確立している状態でした。
➢ 学習期間
学習期間:2020年4月~(学習時間:約330時間)
➢ 使用した教材(学習開始順)
①通関士教科書 通関士 完全攻略ガイド 2020年版
②みこ会
③通関士教科書 通関士 過去問題集 2020年版
④通関士教科書 通関士試験「通関実務」集中対策問題集 第3版
⑤こんさくさんの統計品目カード
⑥過去問(52回)
⑦通関士試験 ゼロからの申告書2020
➢ 費 用
・教材代:約25,000円
・模試・本試験代(交通費含む。):約10,000円
➢ 体験記
受験を予定していた別の資格試験がコロナ禍で延期になったので、2020年4月、前年に通関士試験に合格した同僚からおススメのテキストを教えてもらい、教材①を購入しました。同僚から独学で十分可能と言われていたことと、終業時間が不規則で予備校には通えなかったので、独学で受験することにしました。とはいっても試験に関してほとんど知らない状態でした。ある日ネットで偶然みこ会を見つけ、口コミを見て自分に合いそうだったことと費用も手頃だったので入会することにしました。
みこ会で学習に向けた計画の立て方、その他学習法の記事を目にし、まずは学習計画を立てることにしました。学習計画を立てる際に気をつけたことは以下の事項です。
・この計画をやりきったとき、合格するための自信がついているか。
・計画の進捗に変化があれば、柔軟に見直すこと。
・これまでの経験から問題集は最低3周やること。
・学習時間にこだわらず、学習した内容を重要視すること。
・一つの科目ばかり学習しないこと。
・間違えた個所は翌日に復習すること。
まずは教材①のテキストを一通り読むこととしました。難しい用語が多く、何回か立ち止まりそうになりましたが、試験範囲全体を把握するつもりで気軽な気持ちで読むことに努めました。併せて学習時間を管理するため、携帯のアプリで使用テキストと学習時間を記録していました。その際、学習時間にはこだわらず、自分が予め設定した目標を達成することを念頭に置きました。教材①は約1か月で目を通し、巻末問題にチャレンジしたところ、通関実務の点数が4/45だったので、これはヤバいと焦りを感じましたが、みこさんに励まされ前向きに淡々と勉強しようと思いなおしました。
テキストを通読した後は、教材③の過去問題集をひたすらやろうと決め、間違えた問題はテキストに戻って復習することを基本サイクルとしました。本過去問題集は、ただ過去問を解くのとは違い、解答に最新の法改正が反映されているので、法改正の有無について調べる手間が省けたことがよかったです。量が厚かったので自分で分割して製本し、その日に勉強する予定のものを仕事用のカバンに入れて持ち歩いていました。本問題集を自分で決めたルールに則って付箋を貼り、学習の進捗状況を目に見える形にしました。当初は問題集を3周やれば十分だと思っていましたが、問題によっては最終的に7回解いた問題もありました。
この頃には日常の生活に試験勉強が組み込まれており、通関業法、関税法等は通勤時間、子どもの習い事の待ち時間や始業前の1時間等のスキマ時間で学習し、通関実務は子どもたちが寝た夜10時以降での自宅、終業後の図書館で学習していました。
5月頃から在宅勤務の回数が減り、6月からは通常の勤務体系に戻りました。徐々に自分が苦手な分野や問題形式が分かり始め、そのような分野等に対しては、内容を丸暗記せず、具体的な流れをイメージして覚えるようにしていました。また、条文等の言葉が難しく感じた時は、自分で絵や表を書いてそれを覚えるようにしました。上司から関税法等を読むときは、主語を明確にすることを意識して読むよう指導されていましたので、特に主語(登場人物)を明確にイメージし図示することに注意しました。
学習当初から、通関実務が受験生にとって最難関科目であり、本試験の合否を分けると聞いていたので、通関実務を強化させる必要があると思い、6月中旬から教材③に並行して、教材④を使用し始めました。この頃には通関実務の問題形式に慣れてきていたのですが、各章に記載された攻略法、特に課税価格の決定方法は加算・不加算の具体例を読みこんだことで、課税価格の計算については本試験まで自信をもって臨めました。
みこ会で早めに1年分の過去問を通しで解いたほうがいいと言われていたので、6月下旬に53回の過去問を解きました。結果は、通関実務21/45、関税法等37/60、通関実務29/45点取れました。これが自信になり、もしかしたら合格できるかもと思い始めました。しかし、相変わらず通関実務は時間が足りませんでした。この頃から、学習期間中のつぶやきをtwitterに書き込み、イイねやコメントをいただいたことも良い刺激になっていました。
8月に入り、子どもたちの夏休みと重なったため、学習が進まないことが多くなりました。また、仕事も少しずつコロナ禍前の状況に戻りつつあり、中長期の学習計画を下方修正する必要を感じ、合格できるのか不安になってきました。そこで、力試しとして52回の過去問を解いてみることにしました。結果は、通関業法31/45、関税法等46/60、通関実務32/45であり、このまま淡々と学習を続けていけば大丈夫との自信になりました。合格できるか不安になったときは、仕事の合間にみこ会の記事を読み直して自分を励ましていました。この頃には携帯の漫画アプリやゲームをすることがなくなり、四六時中通関士試験のことが頭の片隅にあったと思います。
8月下旬に予備校の模試を受けました。本試験を想定して受けたかったので会場受験にしました。会場で何かの試験を受けるのは数年前にTOEICの試験を受けたきりだったので、本試験の前に会場や他の受験生の雰囲気を体験できたことは大きかったです。模試の結果は各科目とも6割前後の点数でしたが、模試は本試験よりも難しいからと自分に言い聞かせました。併せて同僚が関税協会の模試を受けたので、問題を見せてもらい学習しました。この頃が合格への不安が一番大きく、早く試験を受けさせてくれとさえ思っていました。みこさんやtwitter界のみなさまに刺激をもらいつつ、自分を励ましていました。
9月になり、上司や同僚から試験受けるの?と声を掛けられることが増えました。転職したばかりで社内に知り合いが少なかったのですが、試験勉強を機に交流の輪が広がっていくのがよかったです。また、社内の受験経験者から税関HPの使える資料を教えてもらったり、彼らの専門分野から問題を出してもらったり、周囲の環境にも恵まれていたと思います。学習の状況は、過去問を繰り返し勉強することに飽き始めていたので、税関HPのカスタムアンサーや関税率表の解説等を眺めて、自分が通関士になったような気分でいることが増えました。
試験1週間ほど前に会場の下見をしました。普段の仕事で通りかかる場所でしたが、エレベーターまでの導線は確認しておきました。本試験に向けて気持ちが引き締まりました。一方、学習の進捗状況は夜に子どもたちと一緒に寝落ちすることが増え、本試験までの1週間は続けて寝落ちしてしまいました。
これらにより学習計画を修正せざるを得ず、教材⑦ゼロからの申告書は1周のみとし、新たな問題には手を付けず、復習のみを行いました。本試験前日は寝不足の状態をつくり、夜寝付きやすいようにし試験当日に臨みました。
試験当日は会場まで電車よりも車のほうが早く着けること、コロナ禍での受験で昼食は車内でとりたかったので、車で会場へ向かいました。
当日は会場に08:30前に到着、自分の席は出入り口に近い最後尾で、試験会場を見渡せる位置だったこともあり、気持ちはリラックスできていたと思います。
試験開始前、電卓が試験の規格にあったものか確認されました。1科目目の通関業法は複数選択式の手ごたえがあまりなく、休憩時間には不安になりtwitterを覗いていました。
休憩時間はトイレ、エレベーターが混むのでトイレは違う階のものを使用しました。1科目目と2科目目の間の休憩時間は30分なので、つまめるお菓子などは持参しておいたほうがよいと思います。
2科目目の関税法等は、例年の本試験同様の難易度かなと感じました。家で勉強するスタイルと同様、椅子の上にあぐらを書いて問題を解きました。事前に聞いていたより途中退室する人は少なかった印象です。
3科目目の通関実務は問3から解きはじめ、これまで解いたことのなかった消費税を算出する問題は後回しにしました。問題につまることなく、解答終了時点で20分余ったので、マークミス等を見直したところでタイムアップしました。
本試験翌日には一部解答速報が出ると聞いていたので、仕事中も全然落ち着かず、すぐに自己採点をしました。関税協会での解答をもとに自己採点した結果、通関業法39/45点、関税法等42/60点、通関実務31/45点でした。合格点を上回っていたときの興奮と感動は一生忘れないと思います。
通関実務の点数が低かったのは、輸出申告書の関税率表解説を読まずに全問間違えたこと、貨物分類の知識を問う問題をことごとく落としたことが響いたと思います。また、通関実務は過去問を多めに解かなかったことも反省点だと思います。
➢ おわりに
試験合格を一番喜んでくれたのは子どもたちでした。勉強する親の姿を見せられたことも試験勉強をしたメリットだったと思います。
受験する方々には置かれている状況に応じて、様々な制約があると思います。個人的に思うのは、学習当初に合格できると自分が納得した目標を立てて、それに向かって黙々とアプローチできる人は合格する可能性が高いということです。学習につまずきそうな時には、みこさんがきっと引き上げてくれるはずです。また、資格取得によって給与が上がるなど、資格の取得自体が目的の方もいらっしゃると思いますが、あくまで手段として考えたほうが身に付く知識がより深いものになるし、自分を追い詰めすぎることもなくなるのではと思います。
長い学習期間中、思うように学習が進まないこともあるとは思いますが、無理をしすぎず、みなさまの努力が報われますよう応援しています!